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書籍「安いニッポン  価格が示す停滞」(中藤玲)

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【安いニッポンではいけない理由をもっと分かりやすく説明して!】

うーむ、この話は少々分かりづらい。なぜ、価格が安くてはいけないのか。消費者目線からすれば、同じ品質のものは安い方が良いに決まっている。たとえば、表紙の帯にあるようにディズニーもダイソーも世界で最安値水準だというが、ディズニーランドの楽しさは私の知る限りアメリカも日本も変わらない(ロサンゼルスのそれしか知らないが、むしろスタッフのおもてなし度は日本の方が高いと思う)。だったら、安くそれを享受できるのだから良いではないか。ダイソーだって、百円であの品質のものが買えるから素晴らしいのだ。諸外国のように数百円もするダイソーは嬉しくない。

本書は価格が安いから、企業の収益も上がらず、支払われる賃金も安いのだという。だから20年以上も実質賃が上がらないのだと。しかし、それのどこかいけないのか。諸外国のように高い賃金を得て、高い物を買う方が良いのか、日本のように低い賃金に甘んじても低い物価に満足する方が良いのか──。それに、実質賃金が上がらないと言っても、個人レベルでそれが固定化されるわけではない。昔のように年功序列とはいかないが年年歳歳、相応の実力が着けば個人レベルの賃金は相応に上がるのだ。

たしかに、日本の賃金で外国のサービスを買う場合(海外旅行をするとか、海外のブランド品を買うとか)は不利である。しかし、フツーに国内で生活する分には、後者であってもなにも困らない。むしろ、私のように半分リタイアしている人間にとっては、賃金も物価も変わらない方が将来の見通しを立てやすい。幾らを想定すれば適切なのか分からないインフレ率を無理に定めて、結果として不確かな生涯収支を計算する必要がないからだ。
あるいは本稿を執筆している2022年7月現在、諸外国(特に先進国)では、10%近いインフレ率だという。日本は未だ2~3%程度だが、それが悪い事のように喧伝されているのは何故だろう。

サンフランシスコでは外で朝食や昼食を食べると四千円弱もかかるという。年収1400万円は低所得者だそうだ。そんな暮らしのどこが良いのか。物価以上に賃金が上がっているから良いというが、それは一部の高額所得者にいえることであって、大部分を占める低所得者は物価の高騰に喘いでいるのではないのか。それがかの国の国民の分断を先鋭化させているように見えるが、日本もそうなりたいのだろうか。
もちろん、現在の諸外国の高すぎるインフレ率が問題であって、適切なインフレーションがないとそれら諸外国との競争に負けてしまう(品質の良いモノばかりでなく優秀な人材も買い負けてしまう)という指摘は、適切なインフレ率などコントロールできるのかという問題を別にすれば、分からなくはない。たしかにこのままだと、優秀な企業や人材が海外へ流出してしまい、国家として成り立たなくなるだろう(たとえば、ただでさえ高齢化の進むこの国の社会保障の財源が枯渇するとかだ)。
しかし、いかにも遠回りの説明である。それでは、目の前のモノの安さには負けてしまうのだ。誰か、もっと一言で分かりやすく、安いニッポンでは駄目だと説明してくれないものか。

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