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映画「フレンチアルプスで起きたこと」(監督 リューベン・オストルンド)

映画「フレンチアルプスで起きたこと」(監督 リューベン・オストルンド)

【極限状態の自分には責任持てません、って話】

妻子を置いて逃げ出すなんて考えられない。こんなクソ野郎とは妻のエバは即刻、別れるべきだ──と最初は思いました。ましてや、自分のやったことを何だかんだと屁理屈をつけて認めないなんて、夫のトマスって野郎はとんでもない奴だと。

しかし、本当の極限状態に置かれた時に、果たして自分がどういう行動をとるかなんて、実際にその時になってみないと分からないのも確かです。トマスだって普段は妻子を置いて逃げ出すなんてありえない──そう思っていたはずなのです。

日常ではどんなに高尚な道徳観や倫理観を持っていたとしても、自分の命が脅かされるような状況になったら、どんな自分の知らない顔が出てくるのか……、ちょっと、と言うよりかなり怖いがします。怖いと思うのは、倫理観の決して高くない自分が自分の中にいることを知っているからかもしれません。

そう考えると、普段どうありたいかと思っていることが大事なのだと思えてきます。それだけで、十分に尊いことなのだと。

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