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小説「素粒子」(ミシェル・ウエルベック 作)

小説「素粒子」(ミシェル・ウエルベック 作)

【僕らは君を取り替えの効く家畜だなんて思っちゃいない】

作者ウエルベックは別の作品で「人生の目的は消費とセックス」だと言い切りました。その潔さに思わず快哉を叫んだのですが、よく考えてみれば人生の目的はやっぱり幸せになることであって、欲望を満たすこと──消費やセックスに代表される──はそれを確認するための一つの手段にすぎないのだと気付きます(そんなことよく考えなくてもわかれよ。てか、その手段もおかしいだろ)。

本書のテーマも基本的に同じです。手段であるはずの欲望を目的とはき違えて、それを満たせば満たすほど本来の目的である幸せが遠退いていく──。ドイツの経済学者ヴェルナー・ゾンバルトが一世紀も前に著書「恋愛と贅沢と資本主義」で喝破したように、資本主義社会はそのはき違えによって成立しています(「じゃじゃの私設図書館オススメBOOKS&MOVIES」p56参照)。

したがって、21世紀の高度な資本主義社会にあっては、一層そうした傾向が加速され、一方で主人公は、そして読んでいる私も老いへの恐怖が焦りを募らせます。

──だがアナベル。君は間違えている。僕らは君を取り替えの効く家畜だなんて思っちゃいない。ただ欲望を満たすその瞬間でしか互いの気持ちを確かめられないだけなんだ。

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