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小説「ノルウェイの森」(村上春樹)

小説「ノルウェイの森」(村上春樹)

【性(生)と死】

何年か前から、もう一度読み直したい──というか、何故か読み直さなければ、と強迫観念すら伴って思っていた。ひとつには、数年前にこの小説のプロトタイプとされている短編「蛍」を読んだのがきっかけになっている。だが、それだけじゃないような気がする。本棚で背表紙のタイトルを見るたびに、「お前はこれをもう一度読まなければならない」と語り掛けて来るのだった。

そしてそれはこの秋、果された。読み直す前は、なんだか暗い森の中で少女が首を吊る印象しか残っていなかった(それが脳内にぼんやりとした映像として残っていた)。主人公の名前も、登場する何人かの女性のそれも、まったく憶えていなかった。村上作品は好きだが、熱烈な……というわけではないのである。

さて、何十年かぶりに読んでいて思ったのは、私はこれら登場人物にまったく馴染めない──ということだった。まず、主人公のワタナベに馴染めない。いつも皆から一歩離れたところに居て、利いた風なことばかり言う奴のように思えた(いるでしょ、そんな奴)。ものごとにコミットしようとしないくせに、なにかあれば自分のせいだなんて、とんちんかんなことを言う奴だ。

あと永沢が嫌いだ。東大だか何だか知らないが二〇代前半で、この世界や人生のなにもかもが分かったようなこと言うなんて……。私など、六十五を過ぎても何一つわからないのに。永沢は、おそらくワタナベの分身なのだろう。いずれにしても、こんな奴はその後の人生で思いっきり地獄を味わえば良いのだ。

それから、奔放すぎる緑も嫌いだし、最後の最後でワタナベとやっちゃうレイコさんも……。いくらこの小説のテーマが「性(生)と死」だからって、それはないんじゃないの?

あれっ、おかしいな、若い頃読んだときは、こんなこと思ったっけ……。この感覚は、映画「卒業」を観直した時と似ている。結局、本棚の背表紙が私に訴えていたのは、お前もそろそろ歳を取ったということを自覚しろよ、ということだったのだろうか。どのみち今さらもう、あそこには戻れないのだ。

(こりゃ、ハルキストから総スカンだな……。)

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