ドラマ「結婚できない男」（主演　阿部寛）

【しようもない蘊蓄と屁理屈を垂れ流す男】

妻が死んでから、かれこれ30年近く経ちますが、その間に何度、何で再婚しないの？　と聞かれたことでしょう（今では、何でしなかったの？　と過去形で聞かれるようになりました。悲しいことに）。そのたびに、

「いやあ、女の子にモテないんですよ」

と自嘲気味に答えていたのですがこれは、本当はモテるんだけどね、主義として再婚しないのさ、と暗にほのめかしているつもりでした。

しかし、よく考えて見ると（いや、よく考えなくても）実態としてモテていなかったのだと思います。なぜなら私は今から思うと、この阿部寛演じる主人公・桑野信介にそっくりだったのです。

場違いでしようもない蘊蓄をひけらかし、正論だとばかりに屁理屈をこねくりまわして、相手の気持ちを萎えさせる──そんな男がモテるわけないのです。

しかし、このドラマでは終盤、実は桑野は心に思っていないことを、あるいは心と逆のことを口にしてしまう男で、本当は愛すべき男なのだという筋立てに変わっていきます。

違うんだよなあ。この手の男は、心の底から自分の言っていることが正しいのだと思い込んでいるのですよ。

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