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小説「グレート・ギャツビー」(スコット・フィッツジェラルド 村上春樹 訳)

小説「グレート・ギャツビー」(スコット・フィッツジェラルド 村上春樹 訳)

【デイジーこそが時代の象徴】

物語の前半は退屈でした。というのは、なんとも縁遠い世界だと感じられたからです。

舞台は百年近く前のニューヨーク近郊。当時のアメリカは第一次世界大戦の戦勝国として浮かれていて、「狂乱の20年代」と呼ばれた時代だったそうです。そこでの退廃的な都会人の暮らしぶりが繰り広げられるのですが、極東の島国で21世紀を慎ましく生きる私にはそれがどんなものか、今一つ想像できなかったのです。

しかし後半に入ると、成り上がり者の主人公ギャツビーが昔の恋人デイジーへの想いを、この物語の語り手である「僕」に打ち明けます。その辺りから、話は急に身近に感じられて、面白くなってきます。恋バナは時代も国柄をも超えますからね。

結局、デイジーこそが、この物語の本質のような気がします。彼女こそが「いろんなことを引っ掻き回して、あとは知らん顔して引っ込んでしまう」張本人──時代そのもの──なのです。そしてそれは、バブルの頃の東京にも通じるところがありますし、今のこの国の都会人にも引き継がれているように思いました。

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